イエンツ・マークアート(チーム・マネジャー)Q&A
新しいサーキットのためにロジスティクスの準備を進める際、最初にやることは何ですか?
「最初にやるのは、とにかく事前にできる限り多くの情報を収集するよう努めることだ。そのためには、そのサーキットと直接連絡を取る場合もあるし、あるいは、たいていの場合がそうだが、サーキット側からわれわれに対し現況を教えてくれることもある。例えば鈴鹿の場合、ピット施設がいろいろと変わった。そのため彼らはわれわれに施設の図面と彼らのプランにかんする情報を送ってきたし、写真を撮ったり、質問をしたり、こちらから要望を伝えたりなど現場の状況がどうなっているのかを把握するための現地視察の招待状を送ってきた。電気設備やネットワーク関連などについて、こちらが何を必要としているのかを事前に聞いておくことも、彼らにとって役に立つからね」
新コースの施設について何か3つ願いがかなうとしたら、何をお願いしますか?
「まずは快適に仕事をし、全てを問題なく収納するための十分なスペースだ。チーム数が増える来年のことを考えるとなおさらだ。次に優先事項となるのは、他のサーキットのものと、できるだけ似通った設備にしてもらうことだろうね。そうすれば、われわれの機材を頻繁に変えたり、調整したりする必要がなくなる。最後に、良好な輸送のためのインフラが不可欠だ。これがないと、チームにとっては深刻な不都合が生じかねないからね」
今度のアブダビにかんしてはいかがでしょう?
「アブダビの場合、完全に新しいサーキットなので、鈴鹿とは状況が異なる。なぜなら、既存の情報が何一つないからね。バーレーンGPの後、われわれはアブダビに招待され、その時点でどんな準備が整っているのか、そしてどんなことが計画されているのかを見せてもらった。彼らはわれわれの意見に耳を傾けていたし、ピットとオフィスの配置や、アクセスにかんする問題についても話し合った。しかしアブダビは通常とは幾分状況が違う。というのも、以前トヨタチームにいたリチャード・クレーガンとアンディ・ビーヴンがこの計画に携わっているからね。当然ながらわれわれは彼らとは緊密な連絡が取れている。彼ら二人はチーム側の視点から見たさまざまな専門知識を有しているので、何が必要とされているのか、彼らには正確に分かっているんだ」
サーキット以外のロジスティクスについてはいかがですか?
「サーキットそのものを確認した後の次の任務は、ロジスティクスにかんする状況を把握することだ。例えば、どんなホテルがあるのか、どの空港が最適なのか、そしてチームが現地に入った際、彼らをどのようにして移動させるか、といったことだ。われわれは、外国人がレンタカーを運転することにかんして何か規制があるのかどうかや、バスを使った方がより好都合なのかどうか、といったことも確認する。そして、最も便利で効率よく、かつ費用対効果に優れた手段がどれなのかを基準にして決断を下す。これは実はかなり長期にわたる準備作業になり、やるべき仕事もかなり多い。それにはレース前の6カ月から1年ほどの時間がかかるんだ」
アブダビのサーキットへの人員輸送にかんして、ロジスティクスはどんな状況でしょう?
「アブダビのロジスティクスにかんしては、全てが良好だと言っていいだろう。われわれのホテルは空港と市街地とサーキットの間に位置しているから、人員の輸送にかんしては良好のはずだし、車の運転も問題ないはずだ。入国とヤス・アイランドへのアクセスにかんしては、通常の場合許可が必要で、その点やや不安があった。しかしこの件はすでにFOM(フォーミュラ・ワン・マネージメント)と政府の間で話がついているので、チームにとってはかなり手続きが楽なはずだ」
予約するホテルはどうやって決めるのですか?
「たいていそれは経費と場所と快適性を天秤にかけて決まる。われわれには、チームに提供したいと思っている一定の基準があり、同時にわれわれには各イベントに割り当てている予算があるため、一番うまく当てはまるホテルを探す必要がある。アブダビの場合、われわれはドバイに宿泊して、毎日サーキットに通うことも検討した。ホテルがわれわれの要求にかなっていればそうするつもりでいたんだ。だけど、実際の所、それはまるで現実的ではなかったね。移動時間が長くなるし、砂嵐や交通事故の可能性もある。だから最終的にわれわれはアブダビ市内にあるホテルを選んだ。われわれの哲学として、コースから適切な距離にある適切な宿泊施設を利用できれば、スタッフからより質の高い仕事を引き出せる、と考えている。長時間の仕事を終えた後、さらにホテルへの移動に1時間以上も費やすというのは、かなりの負担になるからね」
レースのスタート時間が夕刻ですが、これのせいで状況が複雑になったり、あるいは通常の仕事の手順に変更が必要になったりしますか?
「ありがたいのは、今回が今シーズンの最終戦だということだ。シンガポールでのナイトレースとは違い、スタート時間が遅くてもロジスティクスや、荷造りの面で特に問題にはならない。シンガポールの場合、日本GPと2週連続開催だった影響もあったしね。あの状況は日曜日のロジスティクスの面でかなり問題だった。われわれは遅い時間にレースをし、その上、貨物は通常の時間までに、つまり、月曜日の午前4時までに間に合わせなければならなかったんだ。その時間内に全ての手はずを整えるのは、担当者たちにとってかなり骨の折れる仕事だったんだが、アブダビではそれは問題にはならない。今回は最終戦だから、次のサーキットへ機材を運ぶために慌てる必要はないし、われわれの貨物機は月曜日の夜なので、時間は十分にある」
ブラジルからアブダビまで、TF109はどうやって運んだのですか?
「クルマはFOMの貨物機でブラジルからアブダビへ直接搬入した。先週末に到着して、チームスタッフが現地に到着して月曜午前中に作業を開始するまで、アブダビに保管されていた」
ヤス・マリーナ・サーキットの全体的な印象はいかがでしょう?
「サーキットは最高だ。4月に視察に訪れた際、彼らはすでに太陽が出ている時間の全てを使って作業を進めていた。ただし、一番暑い時間を除いてね。というのも、それは不可能だからだ。あれ以降にわれわれが確認できている最新の設備はとにかく素晴らしい。ああいうのは、F1コースでは今まで一度も目にしたことがないね。建設中のマリーナを囲むようにコースが走り、ホテルの間には橋があるんだ。彼らはサーキット一帯にかなりの投資をしており、間違いなく他とは違ったものになっている。彼らはわれわれの希望を全て正確に準備するよう、各F1チームために相当な努力をしてきた。われわれにとって近年で一番楽な新開催レースになればいいね」
(トヨタ・プレスリリース)