鈴鹿サーキット概説
3年ぶりに鈴鹿がカレンダーへ復帰し、日本GPを開催する。鈴鹿には、多くの高速コーナー、そして急激な方向転回があり、タイヤには大きな負荷がかかる。だが、8の字のレイアウトになっていることで、ラップ全体での負荷はバランスの取れたものとなり、コーナリング時のスピードから想定されるほど摩耗の度合いは大きくない。2ストップ戦略が一般的だが、天候の要素を考慮に入れる必要もある。台風に見舞われることもあるためだ。
技術面の解説
自動車力学面
平均ターン・アングルは、サーキットのコーナーを角度で表したものによって示される。平均ターン・アングルが高くなれば、サーキットがより鋭いコーナーで構成されていることを意味するため、アンダーステアがラップタイムに与える影響が大きくなる傾向にある。鈴鹿の平均ターン・アングルは99°、これは選手権全体の平均を下回る数字だ。また鈴鹿は、F1カレンダーの中で唯一、8の字のレイアウトを採用しているサーキットだ。
2006年の鈴鹿での、ストレートの終わりでのスピード(EOSスピード)は時速311kmであった。これは、鈴鹿が2009年のカレンダーの中で 4番目にEOSスピードが高いことを意味しており、ダウンフォースと空気抵抗を最適化するために設定されるウイングのレベルを決定する際、指標の1 つとなる。また鈴鹿は、カレンダーの中で3番目に1周の平均スピードが高いサーキットだ。
ピットレーンと給油戦略
ピットレーンの長さと形状は、最適な燃料戦略の決定に影響する。鈴鹿のピットレーンで失う時間は約19.9秒、これは選手権の中でも10番目に損失の大きいピットレーンだ。標準的な5kmを鈴鹿で走行するには、2.37kgの燃料を消費する。今シーズンの全サーキットで5kmを走行するための平均消費燃料は2.42kgであり、鈴鹿は5番目に燃料消費量が少ないサーキットである。
セーフティカー
レース戦略を決定する際に、もう1つ重要な要素となるのが、セーフティカーの出動する可能性だ。これは、天候の変化、クルマの排除などの作業をする際にレースを続行できるだけの十分なランオフエリアがあるか、特にレーススタート時の1コーナーの入り口と出口などのサーキットのレイアウトが考慮される。鈴鹿で開催された最近5回のレースで、セーフティカーが出動したのは1回のみであった。このため、鈴鹿はセーフティカーが出動する確率が低いサーキットであると言える。
気温、気圧、湿度
ブラジルGPのインテルラゴスに到着したドライバーが、グリップ不足とエンジンパワーの低下を訴えるのは、長年の伝統となっている。シーズン中のエンジンや空力のパフォーマンスの基本的なレベルを知っていても、シーズン終盤戦のために海水面より750m高い土地へ移動すると、空気が薄くなることにより、クルマのエンジンパワーや空力のパフォーマンス、また冷却の性能を奪うことになるのだ。この損失をパーセントで表すと2ケタ近くになることもあり、さらに他の影響もクルマのパフォーマンスに与える。
空気の薄さは気温を左右する要素の1つであり、気温は季節や、高度と密接に関連している気圧に大きな影響を受け、湿度からも多少の影響を受ける。もしレースが毎年同じ時期に開催されるならば、空気の薄さに大きな影響を与えるのは高度である。鈴鹿は海抜50mに位置しており、2009年の開催地の中で6番目に平均気圧が高い(1009mbar)。そのため、サーキット周辺の大気が、エンジンのパワーへ若干の影響を与える。
ドライバーのコメント
シンガポールGPを振り返って
ニコ・ロズベルグ(以下、ロズベルグ):シンガポールGPは、いいレースでもあったし、悪いレースでもあった。トップを走るチームに並ぶため、僕たちがどれほどの進化をしたか考えれば、高く評価していいと思う。でも、僕のバカなミスのせいで、手にしかけていた2位を失ってしまったんだ。
中嶋一貴(以下、中嶋):シンガポールでは堅実なレースをできましたが、単調なレースでもありました。これと言って悪い局面はなかったのですが、いい面もなかったですね。週末の間ずっと、力強さを発揮していましたし、一貫してもいました。ですが、結局レースではポイントを獲得できる8位まで上がることができませんでした。今週末の日本GPで(ポイント獲得を)達成できればと思っています。
シンガポールGPと日本GPの間の予定について
中嶋:火曜(29日)の午前中からスポンサーのイベントがあるため、月曜(28日)に東京へ移動します。鈴鹿に行くのは水曜(30日)になりますね。月曜(5日)と火曜(6日)にもスポンサーのイベントがあるので、レース後も休めません! かなり忙しいように思われるかもしれませんが、去年よりは楽になりましたね。去年はすべてのイベントがレース前の一週間に詰まっていたんですよ。
ロズベルグ:火曜にRBSのイベントに参加するため、香港へ行くんだ。水曜に日本へ向かうことになる。
日本について
中嶋:僕は鈴鹿で育ったようなものなんです。サーキットへは何度も行ったことがありますし、カートを始めたのも鈴鹿でした。F1だけではなく、日本国内のモータースポーツも含めて、鈴鹿では数え切れないほどのレースを見てきました。なので、鈴鹿へ行くのは家に帰るような感覚ですね。4月に短時間でしたが訪れたことを除けば、4年間鈴鹿へ行っていません。なので、新鮮な気分で鈴鹿へ行けます。素晴らしい場所ですし、鈴鹿へ行くのが待ちきれません。
ロズベルグ:鈴鹿を楽しみにしているよ。僕たちの調子はいいだろうからね。個人的には、スパと並んで最高のトラックだと思う。ファンがかなり情熱的だから、F1にとってもいい開催地だね。
鈴鹿での技術的な面について
中嶋:鈴鹿は、技術的な面が非常に難しいレイアウトになっています。8の字の形に設計されていて、低速と高速合わせて16のコーナーがあります。僕が好きなのは有名な130Rですね。まったくミスが許されないコーナーです。かなり高速なサーキットなので、バランスの取れたクルマにする必要があります。そうでなければ、最後まで苦しむことになります。この時期の日本で気にしなければいけないのは、天候です。いろいろな可能性がありますが、それによって面白い展開になるかもしれませんね。
ロズベルグ:鈴鹿へは3年行っていないけど、前回の鈴鹿では本当に気持ちよく走れたから、今回も期待しているよ。
サム・マイケル(テクニカルディレクター)の鈴鹿サーキット、コース解説。
3コーナーから5コーナー
素晴らしい高速コーナー。このS字区間では、バランスとダウンフォースが要求される。また、リズムも必要になる。
11コーナー、16コーナー
このヘアピンとシケインは、すぐ後にスロットル全開区間が続くため、トラクションが重要だ。
13コーナー、14コーナー
スプーンでも高速のバランスが欠かせない。
15コーナー
130Rは、このサーキットでも最高のコーナー。全開で抜けられるだろう。