F1の商業権を一手に握るバーニー・エクレストン。エクレストンにとって理想的なタイトル争いの流れは2008年と同様、最終戦まで決まらずにもつれこむことだ。
しかし、今週末のブラジルGPでジェンソン・バトン(ブラウンGP)が3位に入れば、あと1戦を残してドライバーズ・チャンピオンは決まってしまう。
エクレストンは次のように言う。
「彼が私の願いどおり最終戦アブダビGPで世界選手権を獲ってくれれば言うことなしだが、もしそれまで待てないというのなら、それもしょうがないな」
セバスチャン・ベッテル(レッドブル)を大きく推すエクレストンだが、王者にふさわしいのはバトンだと思っている。エクレストンがポイント制に代えて導入したがっているメダル方式では、すでにバトンが2009年のチャンピオンだからだ。
「バトンは戦いに終止符を打つだろう」と、エクレストン。
もしサンパウロでタイトルが決まらなくても、アブダビでバトンに課せられる仕事はシンプルなものだ。
バトンの得点にもっとも近いチームメートのルーベンス・バリチェロがブラジルGPに優勝し、その間バトンがホテルで昼寝をしていても、2週間後のアブダビでバトンにはまだ4ポイントのリードがある。
また、もしバトンがブラジルGPで4位にとどまった場合でも、最終戦で8位に入れば世界チャンピオンだ。
ベッテルは、2人の争いからさらに2ポイント離されている。これについてミハエル・シューマッハは自身のウェブサイトで、「最後まであきらめるな」と母国ドイツの後輩にゲキを飛ばしている。
メルセデス・ベンツのノルベルト・ハウグ(競技責任者)もまた、「流れはセバスチャン(ベッテル)にある」と話す。日本GPでの勝利は「今季もっとも印象的」だったというのだ。
もっとも3度の世界王者ニキ・ラウダは、バトンが「バカなこと」でもしない限りバトンの王座は揺るがないと言っている。
思い起こせば1年前のブラジルGP、現チャンピオンのルイス・ハミルトン(マクラーレン)は危うくタイトルを逃すところだった。フェリペ・マッサ(フェラーリ)を相手に、満員のグランドスタンドは完全なアウェー状態。「人生で一番の緊張」を味わったと、ハミルトンは次のように当時を振り返る。
「僕のタイトル獲得を望むファンは全体の2%くらいだっただろうね。残りはみんなフェリペを応援していたよ」