スクーデリア・フェラーリ・マールボロのキミ・ライコネンは10位で、チームメートのジャンカルロ・フィジケラは13位でシンガポールGPをフィニッシュした。
12番手と17番手で予選を終えていた両ドライバーは、事実上オーバーテイクが不可能なこのストリート・サーキットで、大きなチャンスを得ることができなかった。また、事前から予測されていたセーフティカーの導入も、スクーデリアの有利にはならなかった。
ポールからスタートしたルイス・ハミルトン(マクラーレン)が優勝し、マクラーレンがコンストラクターズ選手権3位のフェラーリに3ポイント差まで迫ってきた。コンストラクターズ選手権のトップはブラウンGP、2位はレッドブルとなっている。ハミルトンとともに、2位に入ったトヨタのティモ・グロックと3位に入ったルノーのフェルナンド・アロンソが表彰台へ上がった。
唯一のナイトレースであるシンガポールGPを、ライコネンは6列目の12番グリッド、フィジケラは17番グリッドからスタートした。BMWザウバーのニック・ハイドフェルドは、ピットレーンからのスタートを選択していた。
シグナルが消えると、ハミルトンがリードを守り、ニコ・ロズベルグ(ウィリアムズ)がセバスチャン・ベッテル(レッドブル)を抜いて2番手へ上がった。アロンソもベッテルの横に並んだものの、抜くことはできなかった。マーク・ウェバー(レッドブル)はスタート順位と同じ4番手を守っていた。2台のフェラーリはトラフィックの中に埋もれており、ライコネンは13番手、フィジケラは16番手。最初にリタイアしたのはロメ・グロジャン(ルノー)、3周目のことだった。
ラップタイムは去年よりも遅く、ハミルトンがこの時点で記録していたタイムは1分49秒172だった。規定時間いっぱいの2時間近くのレース時間が予想されたが、暑さと湿度が高い中では、ドライバーにとってもクルマにとっても厳しいものであった。
5周目の時点では、ハミルトンがトップ。2番手以降は、ロズベルグ、ベッテル、ウェバー、ティモ・グロック(トヨタ)、アロンソ、ルーベンス・バリチェロ(ブラウンGP)、ロバート・クビサ(BMWザウバー)、ヘイキ・コバライネン(マクラーレン)、ジェンソン・バトン(ブラウンGP)、中嶋一貴(ウィリアムズ)、セバスチャン・ブエミ(トロ・ロッソ)、ライコネン、ハイメ・アルグエルスアリ(トロ・ロッソ)、エイドリアン・スーティル(フォース・インディア)、フィジケラ、ビタントニオ・リウッツィ(フォース・インディア)、ヤルノ・トゥルーリ(トヨタ)、そしてハイドフェルドが最後尾となっていた。
1周後にはグロックとアロンソがウェバーの前に出た。ライコネンはブエミの2秒後方、フィジケラはスーティルの2.4秒後方につけていた。KERS(運動エネルギー回生システム)を切るように指示されたものの、この時点でもハミルトンが最速であり、前方が開けていることの利点を生かしていた。10周もすると、ライコネンがブエミと同じようなタイムを出すようになり、ブエミとライコネンの差は縮まっていった。そして11周目にライコネンは、やすやすと12番手に上がっている。14番手を走行していたアルグエルスアリは後ろのドライバーを抑えており、0.6秒後方にはスーティルが、その0.6秒後ろにフィジケラがついていた。しかしフィジケラも、リウッツィからプレッシャーを受けていた。
14周目になってもハミルトンがトップ。2番手ロズベルグまでは3秒の差があり、そこからベッテルまでは1.7秒となっている。ベッテルと4番手グロックとの間には大きなギャップがあり、アロンソはグロックの5秒後方につけていた。5番手以降はウェバー、バリチェロ、クビサ、コバライネン、バトンまでがトップ10を形成している。
最初にピットへ入ったのはベッテル、17周目のことだった。ベッテルはこれで7番手に後退し、次の周にはロズベルグがピットイン。これと同時にウェバーもピットへ入り、フィジケラ、リウッツィもピットインしていた。2番手に上がったグロックは19周目、トップのハミルトンは20周目にピットインした。
ここで予測されていたセーフティカーが出動。アルグエルスアリを抜こうとしたスーティルがスピンし、ハイドフェルドと接触したためだ。1回目のピットストップのタイミングであったため、多くのドライバーがピットインし、ライコネンもこのタイミングでピットへ入った。
アルグエルスアリは給油機がつながったまま発進しようとし、クルーが倒れてしまったが、これ以上の問題が起きることはなくピットを離れた。24周目までには全ドライバーが1回目の給油を終わらせ、セーフティカーに先導されていた。この時点での順位は、ハミルトン、ロズベルグ、ベッテル、グロック、アロンソ、バリチェロ、コバライネン、バトン、ウェバー、クビサ、中嶋、ライコネン、ブエミ、トゥルーリ、フィジケラ、リウッツィ、アルグエルスアリとなっている。スーティルはピットへ戻ってリタイアした。
セーフティカーは25周目終了時に戻ったが、導入されていた時間が長かったため、タイヤとブレーキの温度が大幅に下がってしまい、グリップとブレーキの性能が低下してしまった。トップのハミルトンから最後尾のアルグエルスアリまでが10秒以内に収まっていた。2番手のロズベルグは、ピットレーン出口で白線を越えたため、ドライブスルーのペナルティーが科されている。ロズベルグは27周目にペナルティーを消化した。
そのころ、上位での戦いが白熱したものになっていた。ベッテルがハミルトンとの差を詰め、29周目には0.8秒にまで迫った。3番手のグロックは、その4.1秒後方だ。11番手のライコネンは1.9秒差で中嶋を追っており、ブエミを1秒後方に従えている。15番手のフィジケラはロズベルグの3.9秒後方、リウッツィの0.8秒前を走行していた。
34周目のロズベルグから2回目のピットストップが始まった。37周目にはトップでの戦いがさらに激しさを増し、タイム差は0.5秒にまで詰まっていた。38周目にブエミがピットインしたことでフィジケラは13番手に。39周目には2番手のベッテルがピットへ入り、給油ができていなかったブエミも再度ピットインした。しかし、ベッテルはピットレーンでのスピード違反でドライブスルーペナルティーを科され、43周目にペナルティーを消化していた。この時点ではライコネンが10番手、フィジケラは13番手になっている。
9番手のウェバーが44周目にピットインしたが、右フロントのホイールに問題があったため、長い作業時間となった。次の周には2番手のグロックがピットインし、6番手まで下がった。45周目にはウェバーがウォールへクラッシュ。ここでハミルトン、コバライネン、バリチェロ、中嶋、フィジケラがピットインした。まだ給油を行っていないアロンソがトップに立った。バトンもまだ給油を行っていない。
ライコネンは52周目に2回目のピットストップを行い、54周目には10番手になっていた。上位ではハミルトンが優勝を確実なものにしており、その7.1秒後方にグロックがつけ、アロンソが3位表彰台へ向けて走っていた。4番手以降のポイント圏内は、ベッテル、バトン、バリチェロ、コバライネン、クビサとなった。残り5周となったところで、ライコネンは9番手を走る中嶋に迫ったが、8番手のクビサはそのさらに1秒前方を走っていた。その後にポジションが変わることはなく、チームの連続ポイント獲得は10レースで終わることになった。チームと両ドライバーがいい成績を残している鈴鹿での次戦までは、数日しか残されていない。